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闇夜に瞬く星と、白く輝く満月。
見上げれば綺麗なその夜空は、この村では今誰も見ない。
そんな余裕さえ無い、と言うのが正しいか。
何故なら村は今、赤い色に染まっている。
大地から立ち上る炎は方々(ほうぼう)の家を燃やしていく。
逃げ惑う人々の数は少ない。大半は村を襲った者達の犠牲と化した。
二足歩行の魔物達が、サーベルや斧を携えて村を闊歩する。豚鼻と鋭い牙を特徴とした醜い魔物達は、村の近くに住んでいるものではない。
突如現れたそいつらは、口ぐちに叫ぶ。
「マジョサマのゴメイレイだ!」
知能が低いのか、それだけを繰り返しながら魔物達は人間を一人も逃さずに追いかける。
絶叫。そして、炎と共に鮮血も舞い上がった。
「……はぁ…………はぁっ…………」
一人、村の近くの森に逃げ込んだ銀髪の少年は、小休憩にと呼吸を整える。
念の為に後ろを振り返ってみたが、誰も居ない。魔物は元より、肉親や知り合いさえも。
今日遊んだ友達も、自分に優しくしてくれた大人達も、皆、あの炎の中に置き去りにしてしまった。
「あなただけでも生き延びなさい」と、自分を逃がしてくれた母親を思い出して、歯ぎしりする。
「許さねぇ…………」
自分達が何をしたのか分からない。そもそも魔女という存在すら、この村とは無関係のはずだった。なのに、どうしてこのような仕打ちを受けるのか。
「……いつか俺が、てめぇをぶち殺してやる……!」
両の拳を固く握り、阿鼻叫喚の村を見つめながら、復讐を誓った。
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