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「走るー走るー、俺ーたーちー」
「随分、とっ、余裕、そうだなぁおい!」
夏が終りに近づき、秋の香りがしてきた九月下旬。ビルとビルの間の細い道を、二人の青年が駆けていた。顔は暗がりで、よく見えない。その後ろを、いかにもな感じのステキなおにーさま方が四~五人。いわゆる追いかけっこである
「や、そう見せかけてるだけでものごっつキツイ」
「そー、かよっ!つー、か、誰だよっ、こんな状況、作り上げたの!」
「ホンマやー。誰やあんなごついあんちゃん達けしかけた奴。シバくで」
「お、ま、え、だ、よッ!!!」
「くぉら待てガキィ!!」
「テメェうちの車ブッ壊しやがって!」
「ただで済むと思うなよ!!」
「…あー、そんなこともしたな。だって邪魔やったもんアレ。歩行者用道路のど真ん中に置きはるからあかんのや」
「だから、といってぶっ壊す、必要もねーだろ」
「悪は滅びなあかん。と、正義のヒーローっぽく言ってみる」
「むしろお前が悪、だろ!つーかもう、むしゃくしゃ、してきたッッ!」
ザザザッ、と地面をスライドしながら減速し、振り向き様に右ストレートをぶち込む!見事にクリーンヒットし、一人のおっさんがその場に倒れ伏した。そのおっさんに足を取られ次々と転ぶおっさん共。むさ苦しい事この上ない
「おほー、豪快やねぇ」
「んなこと言ってねェでさっさと行くぞ!」
もつれるおっさん達を尻目に、二人は全力で走っていった
******
「はっ、はっ、はっ、はっ…もう追っかけてこねぇみたいだな」
「流石に疲れたわ…えげつないくらいの全力疾走、もう二度とやらへん」
走り続けて約五分。二人は近くにあった公園で休息していた。そして、光に照らされて漸く二人の顔がはっきりと見えた。一人は白銀の髪に、丸いレンズのサングラスを掛けている。そのためとてもひょうきんな人間に見えてしまう。もう一人は明るいオレンジの短髪で、精悍な顔つきをしていた
「とりあえず、これからどうしよかジミー」
「帰って寝る」
「辛辣やなー。遊ぼーぜ」
「い、や、だ」
――――これは、エセ関西弁の青年、結城刹那と
見た目裏社会にいそうな青年、天道橙と、その友人達が織り成すちょっと非日常の物語――――
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