第零章[始まりは突然に]

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木々の隙間から確かに星が見える。 獣の声が聞こえ、嫌な瞬間が脳裏に浮かんだ。 素直に怖かった。 恐らく前例もないこの状況。乗り切る術も知らない。 ゆっくり立ち上がると、手の平に付着する草を払った。 なんにしろ、此処で留まりどうにかなる物でもない。 「誰か…いないのか」 自分に冷静だと暗示をかけるように呟くと、ゆっくりと木々の中に吸い込まれていく。 得体の知れない草花には振れないように、出来る限り注意を払う。 カサカサとなる雑草とも言えるそれ。 近くには水の気配がする。チャプチャプと聞き慣れたそれが確かに聞こえてくるのだ。恐らく川か……湖か…。 何処から得た知識かもわからないが、川の下流にはたいてい街があるらしい。多分、テレビとか……普段読んでた馬鹿らしい小説なんかでの知識だと思う。 間違っている知識かも知れないのだが頼る以外に道もなく、音を頼りにゆっくり川か湖と思われるそれに近付いていく。 次第に大きくなる音に不思議と安心感を得た。 自分の知る物がそれだけ…という事がそれの原因だろう。
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