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そんな風に、また寂れた思考をし始めた頃だ。
寂しげな公園を、風が揺らした。不思議と季節外れの生暖かいその風は俺の頬を撫で去る。
「誰かの為に生きるのは馬鹿らしいかい? 生きる意味や価値があるから、人は孤独を感じる。それは悪くない悟りだよ。ただ残念ながら全ての人間は意味や価値の為に生きている。存在するんだ――君が憎む孤独は」
それは突然の声だった。
背後から透き通るように、頭に直接言葉がたたき付けられ無意識に俺は背後へと視線を向けていた。
そして微笑む、白い男。
姿形は確かに人だとわかるのに、顔も髪も全てがぼんやりとしていて、はっきりと認識が出来ない。
眠気眼で見ているような、そんな不思議なそいつ。
そいつを一瞬、瞳が捕らえたと思えば世界は世界ではなくなっていた。
暗かった公園ではない。
そこは見たこともないような木々がうめつくす、ジャングルのような場所。
何があったのかも理解出来ぬ内に景色は変わり、ぼんやりとしたそいつは姿を消していた。
「なんなんだよ…これ」
絞り上げた声は震えていて、動揺は目に見えていた。
俺はただ、振り返っただけなんだ。それなのに、この状況は一体どういう事なんだ?
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