第零章[始まりは突然に]

9/22
前へ
/480ページ
次へ
俺は激しく混乱した。 突然見たこともない場所に自分が居る状況を押し付けられれば、当然だろう。 辺りを見渡しては、自分の知り得る情報と見比べていくが、それは何にも該当しない全く未知の場所。 日本にこんな植物があったのだろうか。 まるで生きているかのように、トクントクンと鼓動している大木。 呆れのような感情が沸き上がり、膝をついたままうなだれた。 夢なんかではないのだとわかっている自分が、頼もしくも切ない。 この張り詰めたような空気や、土独特の匂いは、夢のそれではない。 現実だとわかっているからこそ訳もわからないままに混乱している。 世界は不思議だと誰かが言ったのだとしても、こんな状況が普通に起こって良いわけがない。 不思議で片付けられる事ではない。 恐怖よりも混乱は強く全ては麻痺し、冷静には決してなれなかった。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!

313人が本棚に入れています
本棚に追加