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早速日曜日に地主宅を伺った。
地主は還暦を過ぎたばかりの男性であった。(地主をカンダ氏とします)
もっとも、俺は仕事のため行けず、ウエノさんとアキバの2人で行った。
後から聞いたことはこんなことだった。
簡単な挨拶の後、ウエノさんが用件を切り出す。
「新Q地区にカンダさんが所有している土地についてのことなんですが」
「はあ」
「それで、あの土地についてご存知のことを教えて欲しいのです」
「いや、私はただ土地を持っているだけですが」
最初、カンダ氏は不信感、敵対心がありありだったという。もっとも、見ず知らずの人間が尋ねてきて、いきなり土地のことを聞けば無理はないのかもしれない。
さらに少しやりとりがあったあと、ウエノさんが努めて穏やかに言った。
「私どもは、カンダさんに金銭的なことを含めて何か要求したり、責任を追及する気はありません。ただ、俄かには信じられないかもしれませんが、あの土地が原因で人の命が奪われている可能性があります。ですから、何でもいいので昔からの謂れを知っていたら教えて欲しいのです。決して、それを悪用したり、むやみに人に漏らしたりはしないとお約束しますので。どうかお願いします」
そのとき、ひとりの老婆が部屋に入ってきた。カンダ氏のお袋さんである。80を優に超えてはいるがしっかりした人である。
「その子(カンダ氏のこと)はあまり知らないから、私がお話しましょう」
「是非お願いします」
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