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「目…閉じろ」
春風さんは一息ついて、穏やかな声で言ってきた。
「ど、どうして?」
この状況で何をするつもりだろうか?
私はせっかくのペアリングを、肌身離さず付けれなくて落ち込んでいるのに、春風さんは……キスでもするつもりなのだろうか?
そう考えるとテンパってしまい、どうして良いか分からなくなる。
春風さんとなら良いって思えるけど、恥ずかしいし、自分はそんな柄じゃない。
そう思ってしまって素直になれない。
でも、本気で拒みたい訳じゃない。
悶々とあたふたしながら悩んでいると、春風さんが小さく笑ったように見えた。
「良いから目閉じろ」
恥ずかしさと、訳の分からなさで、勢いに任せて目を閉じる。
なるようになれだ。
今日は私の誕生日。
少しくらい素直になっても良いじゃないか。
今日は私が春風さんを独占しても良いじゃないか。
目を閉じたまま、私はそんな事を考えていた。
そんな私の首元に、春風さんの手が触れた。
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