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長老の家からの帰り道、ゲルンがしばらくの間、自分の家で暮らしていいと言ってくれた。
ジンナは叫びたくなる程嬉しかったが、実際には小さな声で「ありがとう」と呟いただけだった。
途中、こじんまりとした雑貨屋に無理を言って店を開けてもらい、リウが喜びそうな小物やお菓子を沢山買って家に戻った。
家の扉を開けると、まるで子犬のようにリウが駆けてきて、ジンナに飛びついてくる。
「ジンナ!ちゃんと戻ってきてくれたんだね!」
「リウのお父さんがね、しばらくこの家にいてもいいって。はい、お土産。」
リウは手渡された沢山のお菓子や装飾品を見て驚きの表情をせた。
「これ…リウにくれるの?」
ジンナは頷いてリウの頭を撫でる。
リウは飛び跳ねて喜び、品物を満面の笑みで眺めた。
「これはゲルン、あなたに。」
ジンナはそう言って、ゲルンに煙草が入ったケースを2箱渡した。
家の出入り口に吸い殻がいくつか落ちているのを見かけていたのだ。
渡した煙草は種類も同じだ。
「すまんな。」
ゲルンはそう言うと、さっそく貰った煙草のケースを開け、一本口にくわえ火をつけると玄関先へと向かった。
その晩、ジンナとリウは同じ寝床で寝た。
リウはまるで母親に甘えるように、ジンナに抱きついて眠っている。
「なんて暖かいんだろう。」
ジンナはリウを抱きしめて物思いにふけっていた。
こんな安らかな眠りは今まであっただろうか。
ジンナは幸せに自然と顔が微笑んでいることにすら気付いていなかった。
この安らぎがずっと続いて欲しい。
逃亡生活にはもう戻りたくない。
ジンナはリウを強く抱きしめ、やがて深い眠りについた。
次の日、3人は朝食を終え、ゲルンが仕事に出たあと、ジンナはリウを連れて買い物に出掛けた。
「リウ、今度はこっちを着てごらん。」
リウは大量の衣服に目を白黒させていた。
ジンナはそんなリウの動揺を全く気にすることなく、サイズが合うものは片っ端から購入していった。
リウの衣服の買い物が終わると、今度は村一番美味いと言われている食事処に行き、お互いの好物をたらふく食べた。
家に帰り、部屋の掃除をしたり、夕食の準備をしたあと、ジンナはリウを膝の上に乗せ、いろんな事を沢山話した。
そんな幸せな生活が6日間続いた。
そして7日目にその幸せが消え去った。
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