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想像以上に長く狭い暗闇をジンナは歩いていた。
目の前にゲルンがいるのだが、それでもその闇はジンナの心を冷やすのに充分だった。
「大丈夫か?」
「うん」
「もう少しで着く。」
ゲルンはジンナを勇気づけるように暗闇の中で力強く手を握りしめた。
しばらく進みようやくゲルンは立ち止まった。
「聞こえるか?」
ジンナは小さな声で返事をした。
微かではあるが人の声が聞こえる。
「村のひと達?」
「まだわからない。」
ゲルンは今まで以上に慎重に暗闇を進んだ。
すると闇の奥に小さな光が見え始めた。
ゲルンは穴がある壁を軽く何度か叩いた。
すると今まで聞こえていた声がピタリとやんだ。
ゲルンは再び壁を叩く。今度は一定の間隔を開けて4回叩いた。
前方の光が急に大きくなった。
「みんな無事か!?」
「その声はゲルンか!?おい!ゲルンが戻ってきたぞ!」
光コケが部屋中に繁殖しているため、その空間はぼんやりとした明かりに満ちていた。
広さはちょっとした集会所くらいはあるだろうか。
そこに50人くらいの人間が集まっていた。
窮屈ではあったが、我慢できない程ではなかった。
ジンナは真っ先にリウを探し、リウの名前を呼んだが返事は返ってこなかった。
「そうですか、リウの行方はわからないですか。」
ゲルンは静かな声で呟くと、水を一口飲んだ。
「じゃが、子供達が何人か集められて馬車に乗せられるのを見た者がいた。その者は傷が深くて先ほど息を引き取ったがの。」
「その中にリウはいたの!?」
ジンナは長老に詰め寄った。
「それがわからんのじゃよ。ただ、戦場で子供が捕まる理由は2つ。人質か売り物かのどっちかじゃて。リウは村の中でも特に可愛いらしかったから、売るとしたらいい値がつくじゃろ。帝国の兵士もそう易々と命を奪うこともあるまい。」
「早く助けに行かなきゃ…」
ジンナは立ち上がり出口へと向かった。
「待ちなされ!」
背後で長老が叫ぶと、ジンナの両肩は2人の男に抑えられた。
「離せ!」
「ジンナ殿、落ち着きなされ!何も助けないと言っているわけではない。実は、我がレップ王国の軍がこちらに向かっておる。明日か明後日には戦になるじゃろう。その合間をくぐってジンナ殿とゲルンには子供達を救って欲しいのじゃ。我々は工作員として、戦に出陣しなきゃならんでの。」
ジンナはゆっくりと腰を降ろした。
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