【第1章 女盗賊ジンナ】

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世界の東に位置する、広大な大陸『ユタ』 多数の国家が存在し、覇権を握るべく日々争っていた。 毎日のように滅ぶ国もあれば、新しく誕生する国もある。 力無き者は1日として生きられないこの土地は、他の大陸で犯罪を犯した者達が最後に行き着く場所でもあった。 そんな激戦が繰り広げられている大陸のやや南西部に位置する国『レップ王国』。 元は『ゼン帝国』の領地の一部に過ぎなかったが、当時の領主が帝国の圧制を見かねて謀叛。 独立に成功し、それから少しずつ力をつけ、今ではゼン帝国や他の列強とも肩を並べる程になった。 そんなレップ王国の首都『モンドール』から、およそ100キロ程離れた森林地帯にある村『ロドル』。 人口およそ300人の村の一角にある質素な小屋で、10歳になったばかりのリウは慌ただしく1人で働いていた。 父親に言われて、精がつく鍋料理を作っていたのだ。 もう少しでようやく出来上がる。 リウは味を確かめ、満足気に頷くと、客人がいる部屋に行った。 布団の中で静かな寝息をたてている客人の顔をリウは覗き込んだ。 日に焼けているが、意志の強そうな目元と、全体的にバランスのとれた顔立ちに思わず引き寄せられる。 リウは同じ女として、ここまで魅力を感じた女性は初めてだった。 最初、父親がこの美しい女性を馬に乗せて家に帰ってきた時は本当に驚いた。 ぐったりとしていて、思わず死体かと思ったのだ。 でも、父親から手当てを頼むと言われてからはすぐに気を取り直し、目に見える傷口に薬草を塗り込み布で縛ると、父親に言われた通り、彼女が目覚めてすぐに食事ができるように鍋料理の支度を始めた。 父親は長老に会いに行ったので、リウは食事の準備の合間に彼女の寝顔を5回も眺めに行った。 そして6回目の今、リウは彼女の頬に触れてみた。 その瞬間、リウは自分の身に何が起こったのか全くわからなかった。 いきなり視界に天井が広がったのである。 そして同時に激しい息苦しさを感じた。 「あんた何者!」 数秒前まで、美しいと思っていた女性が険しい表情で自分を睨んでいる。 リウは恐ろしさと苦しさで泣きたかったが、それ以上にあまりの驚きで声すら出すことができなかった。 「もう一度聞く、あんた誰?」 リウは必死に自分の首を押さえつけている腕を払おうとしたが、抵抗も虚しく徐々に意識が薄れていく。 だがその時、父親が家の扉を開けるのを目にした。
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