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「‥やっ‥離して―」
「ごめんな。辛かったやんな。気づいてあげれんくてごめん。…上手くいってへんねやろ‥?家庭環境…」
「…っ―」
「ずっと前から僕に助け求めてくれてたんに…。気付くん遅くてごめん…」
そうやった。
小さい頃から華ちゃんの家庭環境はあまり上手くいっていなかった。
両親がギクシャクしていて
いつ離婚してもおかしくない状態。
「っ…隆ちゃん…っ」
華ちゃんは涙を流して抱きついてきてくれた。
「大丈夫やで…」
「私…っ。今までずっと我慢してきた‥っ。お父さんとお母さんが毎日毎日喧嘩して…。親戚の人に私が生まれる前まではあんなんじゃなかった…って聞いて…。何もかも私のせいに思えて…」
「…おん…」
「私なんか生まれてこなかったらよかったのかなって思うようになって…っ」
「…そんなこと絶対ない。だって現に僕は、華ちゃんが必要やで?華ちゃんを思ってるもん」
「…っ…隆…」
僕はそっと華ちゃんの涙を拭った。
「こんな時に全然ロマンチックやないけど…僕は華ちゃんが好き。やから…これからは僕をもっと頼って?」
「…うん…っ…私も‥隆ちゃんが好き‥っ」
そして重なった2人の唇。
それと同時に空からは雨がちらつき出した。
次第に大雨になってく。
でも今はこのままでいいよね。
この雨が
今までの華ちゃんの苦しみも
辛さも
やってはいけないことをしようとしてしまった事実も
全て洗い流してくれるから。
やからきっと
明日は雲ひとつない日本晴れ。
END
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