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そして私は決めたんだ。
「…あら、真奈ちゃんいらっしゃい!」
それから私は亮の実家へ足を運んだ。
「お邪魔します…」
「はい、お茶どうぞ。よく来てくれたね」
「お母さん…」
私は真剣な顔で亮のお母さんを見た。
いつも優しくて面白くて
私を本当の子供として見てくれていたお母さんは
めったに見たことのないであろう私の真剣な顔に少し
驚いているようだった。
「ん‥?どうしたん?」
「私‥‥妊娠してます」
「へ‥」
「…亮との子です。数日前に病院に行って来ました」
「ホンマに‥?」
亮のお母さんは
戸惑いを隠せない様子だった。
「お母さん‥私を…亮くんのお嫁さんにしてください…っ」
私は出来る限りの力強い声でそう言った。
「っ…真奈ちゃん‥っ。それ‥本気なん?」
「本気です。お母さん、亮のお葬式の日、"他の人と幸せになって‥"そう言ってくれたよね。でも…私は亮じゃないと幸せになれません。亮じゃないとダメなんです」
「っ…」
亮のお母さんはたちまち涙を流しはじめた。
私も
泣きそうになった。
それでもグッとこらえた。
「隣に亮がいなくてもいい。ぬくもりを直接感じられなくてもいい。ただ、亮のことを想い続けられたらそれが私の1番の幸せです」
「真奈ちゃん…っ」
「それで…っ。子供も生まれて、"パパはすごいカッコ良かったんだよ"って…そう言えることがっ…1番の幸せです…っ。だから…私を亮くんのお嫁さんにしてくださいっ…」
最後は涙でぐしゃぐしゃだったけど…
私はもう決めたよ。
またあの時のように
笑いたい時は笑う。
泣きたい時は泣く。
怒る時は怒る。
亮が言ってくれたように
また一生懸命に生きるよ。
もう
振り返らないって決めたよ。
そんな私に亮のお母さんは
戸棚から取り出した小さな箱を机に置いた。
「これ…。真奈ちゃんが見たら余計に亮を忘れられなくなるって思って隠してたんやけど…もうその必要ないんやね…。はいコレ…」
そう言い亮のお母さんは
その箱を開いて見せてくれた。
「っ…―」
それは…
キラキラ輝く結婚指輪だった。
「絶対…幸せになるんやで」
「…っはい…!!」
亮…
私、頑張るよ。
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