black・侯隆

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「も~っ、きみくん返してよぉっ」 「ほ~ら、悔しかったら取ってみぃ」 教室の中、チビの梨果が 高く手を上げる俺の手ぇ目がけてぴょんぴょん跳ねる。 「もー(笑)返したりーなゆーちん」 「ホントだよ、最低だよねっ!」 マルは俺の嫌味を言う梨果の頭をなだめるようにポンポン撫でる。 俺の手には 梨果のポーチ。 「ホンマ梨果はチビやわぁ」 「はぁっ?きみくんがおっきいだけなんですけどー」 いつもこんな言い合いしてる俺ら。 まぁちょっかい出してんのは俺なんやけど。 その時間が楽しいから。 梨果とおれる限られた時間やから。 「しゃーないなぁ、ほら、返したる…」 「梨果!」 俺の言葉の途中で 廊下で梨果を呼んだ大倉。 「あ、たっちょんっ!!」 「かーえろ。俺、アイス食べたい」 「うんっ。ちょっと待って!」 梨果はさっきとうって変わって笑顔になると カバンに物を詰め込み帰る仕度を始めた。 何やねん… また大倉か。 「おい、ポーチ…」 「じゃあねきみくん!また明日っ」 そう言って梨果は大倉の元へ駆け寄る。 俺はみんなにバレへんように大倉を睨んだ。 すると大倉も 梨果にバレへんようにふっと笑って俺を挑発したかのように俺を見る。 「っな…!!」 「ゆーちん!喧嘩はアカンよ!!」 今にも殴りかかりそうになった体をマルになだめられなんとか抑え込む。 「それじゃあ横山くん、マルちゃん梨果借りてくなぁ~」 2人はヒラヒラと手を振り教室から出て行った。 「ムカつく…ムカつくムカつくムカつく!!」 「まぁまぁ。…言うても梨果ちゃんの彼氏やで?喧嘩なんかなったら絶対こっちを責めてくるって」 「でも…」 「嫌われたくないんやったら、黙っておいた方がいーんちゃうん??」 マルは困った顔してそう言うけど こっちなんかもうそれどころやないねん。 普通…に 普通にただ梨果の彼氏ならまだいい。 俺も梨果が好き…やから それくらい正々堂々戦おうなんて思ったりする。 …でもな? 誰が浮気野郎なんかと正々堂々勝負しよう思う? アイツは浮気してる。 梨果をもてあそんでる。
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