願ったものは、たった一つだけ

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  「…………………」 ぱちっと目を見開いた悠の顔。目線の先には見慣れた天井。角に見える染みが人の顔に見えると小さい頃は怖かったものだが、最近は愛着さえ沸いてきた。 「……夢、だよな」 はぁっ、と肺の空気を押し出すように息をする。先ほどまで見た夢の余韻が大きすぎて暫くは動けなかった。 「恋愛の夢とか……俺らしくないなぁ」 呟くのを合図にしたかのようにむっくりと動きだした。脳は学校に向かう支度をするよう、命令を下す。 カッターシャツを着て、スカートを履く。ベストを被りリボンを結べば終了。 朝食をとるためにリビングに向かおうとしたとき、ふとカレンダーが目に入る。 今日の日付は7月7日。 ーー納得、だからあんな夢を見たのか。 でも、やっぱり俺らしくないよなぁと笑いながらリビングに向かった。 朝食をすませ、いつものように二つ結びに髪を結わえば準備完了。鏡にむかって最終確認。よし、ほつれてない。 「今日の私は可愛いのよ、……なんてな」 いってきまーす、と言い放つと急ぐように駆け出していった。 .
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