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ーーちょっと寂しいかもなぁ。
そんな想いを抱きながら悠は空を見上げる。見上げた夜空は、吸い込まれそうなほど満点の星が煌めいていた。星の名前とか、星座とか分からないけれど、彼女にとって綺麗であればそれだけで十分。手を伸ばせば届くような気がして、思わず手を伸ばす。
「綺麗だな、星。今日晴れてよかった」
きっと会えたんだろうな、と夢を思い出しながら呟く。一年に一度の逢瀬。雨ではかなわないなど、天帝も酷だと思う。
「ねぇ、朝紀。逢える1日と逢えない364日だと、どちらが辛いのかな?」
「は?」
「織り姫と彦星の話。今日七夕だろう」
遊んでばかりいたから、天帝に引き離された。それでも一日に一度の逢瀬だけは許されて、7月7日に巡り会う。
逢えた喜びは果てしないだろうが、別れはもっと辛いだろう。逢えるのはたった一日だけ。またすぐに別れがきてしまって再び逢うのは一年後。逢えない日々は辛いけれど、逢えた一日も辛いのではないだろうか。
「あぁ~……、一日しか会えなくても、好きな奴と一緒にいれるなら嬉しいんじゃねぇの」
それに、あいつら一年逢えなくても心は通じ合えてるだろ。それは幸せだと思うよ、俺は。
そう朝紀は呟くと、空を見上げた。どの星が…だなんて分からない。でもこんなに綺麗な星空なんだから、きっと愛しい逢瀬は叶っただろう。
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