願ったものは、たった一つだけ

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  いざ願い事を書こうとすれと思いつかないものだ。いつもはあれしたいとか、これ欲しいとか思っているのに、こうして書き出そうとすると泡のようにパチンとはじけて消えていく。 「ふむ……何書こう?」 悠が悩んでいる横では、朝紀が何やら短冊に書いていた。有紀などは、笹に結びつけている。 ーー何書いたんだろう、こいつ。 朝紀のほうをじーっと見ていると、視線に気づいたのか顔をあげた。 「………何だよ」 「何書いたのさ」 えっ…と一瞬戸惑ったのを見逃さなかった。その隙をついて朝紀の手元にある短冊を奪いとる。 「ちょっ…!返せよっ」 「はははっ!隙を見せるとは貴様もまだまだだなっ!」 「お前は何キャラだっ!」 こんな時にもつっこみを欠かさない自分が少し嫌になる朝紀くん。……なんで俺、つっこみ役なんてやってんだろ。 「さて、何が書いてあるのかなぁ」 そこには朝紀のやけに達筆な字で ー気づいて貰えますようにー 「…何にだよ」 「……秘密。見たからいいだろう、返せって」 そう言いながら、短冊を取り返す。 「いいじゃん教えてくれたって。ケチー」 「ケチで結構。秘密は秘密だ」 ーー恋心を気づいて欲しいだなんて、本人を目の前にして言えるわけないだろ……ばか。 .
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