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「藤、こっちにおいで」
手招きされるままに、横たわる貴方の横に膝をつく。
「ご主人……」
「君には本当に伝えきれないほど感謝している。……もともと僕はね、人が嫌になってここに来たんだ」
秘めている力のせいで気味悪いと、白い目で見られた。ならば一人で過ごしてやるよとこんな辺鄙な所に家をたてた。
「そうしたら…君に出会ったんだ」
『あのすみません。貴方がこの家の方でよろしいんですよね?』
『…そうだけど?』
『私この庭に咲いてました藤の花です。すっかり荒れていたこの地を綺麗にしていただいたこと、他の花々も喜んでおります。皆を代表してお礼に参りました。本当にありがとうございます』
『……そりゃどうも』
『では、要件はすみましたので失礼させていただきますね』
『まっ……待って!!』
『……?何か?』
『君、名前は!?』
『…残念ながら、私程の力ではまだ名前はつきませんの』
『じゃぁ僕がつけてあげるね!えっと………藤とか、どうかな』
『…藤、ですか』
『うん、藤。決めたそれにしよう。ーーーねぇ、藤。また来てくれるかな?』
「人から離れたかったのに、結局僕は人を求めていたんだろうね。…可笑しいだろう?」
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