4人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
かさりと紙の包みを開く。
――桜色の石がついた簪。悠にあげた首飾りと同じ。
『ちょっと買いたいもんあったの思い出した』
嘘、思い出したんじゃない。ずっとずっと、初めて見た時から買いたかったんだ。
似合うと思ったから。絶対悠の好みだっていう確信があったから。
だけど買ってどうする。買ったからって渡せるのか。どんな理由で渡すんだ?好き、も伝えてない俺に、上手く言える自信なんてない。
それでももう抑え切れなかった。買いたかった……お前にって。
売ってるのは、一度働かせてもらったおばさんの店だ。簪目指して一直線。お目当てのソレを掴むとおばさんの元へ。
『これ、下さい』
『あらやっと買う気になったのね~』
『やっとって……?』
『やだ、あんた働いてる時もずっとこれ見てたじゃないの。分からないほうがおかしいわよ。今日一緒にいた子にあげるの?』
『っ……!!』
『そんなに顔赤くしてー、若いっていいわね。じゃぁこれもおまけにあげるわ』
『首飾り…ですか?』
『そうそう。この簪と同じ石。可愛いでしょ?』
.
最初のコメントを投稿しよう!