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一年に一度だけの逢瀬
何年たってもこの日だけは胸の高鳴りがおさまらない。
この時をどれほど焦がれて
この時をどれほど恋い
この時をどれほど待ち望んだことか。
その髪に触れたくて
その頬を撫でたくて
その胸に包まれたくて
その身体を抱きしめたくて
愛しさで包まれる優しい時間
逢えるまでは嬉しくて
嬉しければ嬉しいほどに別れが辛くなる
離れたくないと願っても
白んでゆく空がその時が近いのを残酷に告げていく。
(…また逢えますよね?)
(また逢えるに決まっているだろう?君は毎年そうやって尋ねるね)
(だって、毎年この瞬間だけは身を裂かれるような思いなんですもの。……永久の別れのように感じられて)
(…身を裂かれるような気持ちは私も同じだ。だから、ほら…顔をあげて)
深く重なりあった唇。やがて名残惜しさを残すように離れていった。
絡めた指を少しずつ解いていく。これ以上触れ合っていたら、離れられなくなってしまうから…。
交わしあう目線。これ以上は離れがたくなるからと、どちらともなく離れた。
ー巡り会うのはまた一年後ー
(たとえその間)
(あなたに逢えなくても)
(また逢えれば、もう何もいらない)
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