孔寺蓮家頭首、香菜弥の過去(その3)

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「へぇ……なかなかやるじゃねぇか……」 香菜弥の下駄箱には毎日、ラブレターならぬ果たし状があった。 1対1の時もあれば、団体を相手することも少なくなかった。しかし、香菜弥にとってそれは退屈以外の何物でもなかった。純粋に、相手にならないのである。 しかし、今回の相手は一味違った。中々やられない。 「お前にっ……!!俺の友人はやられたんだっ!!」 「だからどうした?」 殴りかかってきたところに、蹴りを入れる。グラッと揺れ、倒れる男。 終わった。これでしばらく立てないはず。そう思い、香菜弥は立ち去ろうと背を向けた。 しかし、足を引っ張られる感触。見下ろすと、倒したはずの男が足にしがみついている。 「ま……まだ、まだ終われね…ぇ…」 ハァ…とため息をついて、男の胸倉を掴んで持ち上げる。 「お前……喧嘩の経験は?」 「な、ない……」 「格闘の基本もなってない、動きも隙だらけ。友人の仇を討ちたいなら、半端な覚悟でくるんじゃねぇよ。気合いだけは認めてやる。次来る時は殺す気で来い」 そう言い残し、香菜弥は立ち去る。大抵のやつはここで諦める。 コイツも一緒だと思ってた。しかし、男からの果たし状は尽きることがなかった。次の日も、そのまた次の日も、その男からの挑戦は尽きるコトがなかった。ナイフを持ち出してくる日もあった。 黒髪ショートで、香菜弥が今まで相手をしてきた中で比べると、どちらかと言えば細身に見える程度であろうか。 他の男は皆ゴツい体つきをしていた。 香菜弥は他のヤツとは何かが違うその男と戦うのが、心なしか楽しくなってきていた。
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