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「へぇ……なかなかやるじゃねぇか……」
香菜弥の下駄箱には毎日、ラブレターならぬ果たし状があった。
1対1の時もあれば、団体を相手することも少なくなかった。しかし、香菜弥にとってそれは退屈以外の何物でもなかった。純粋に、相手にならないのである。
しかし、今回の相手は一味違った。中々やられない。
「お前にっ……!!俺の友人はやられたんだっ!!」
「だからどうした?」
殴りかかってきたところに、蹴りを入れる。グラッと揺れ、倒れる男。
終わった。これでしばらく立てないはず。そう思い、香菜弥は立ち去ろうと背を向けた。
しかし、足を引っ張られる感触。見下ろすと、倒したはずの男が足にしがみついている。
「ま……まだ、まだ終われね…ぇ…」
ハァ…とため息をついて、男の胸倉を掴んで持ち上げる。
「お前……喧嘩の経験は?」
「な、ない……」
「格闘の基本もなってない、動きも隙だらけ。友人の仇を討ちたいなら、半端な覚悟でくるんじゃねぇよ。気合いだけは認めてやる。次来る時は殺す気で来い」
そう言い残し、香菜弥は立ち去る。大抵のやつはここで諦める。
コイツも一緒だと思ってた。しかし、男からの果たし状は尽きることがなかった。次の日も、そのまた次の日も、その男からの挑戦は尽きるコトがなかった。ナイフを持ち出してくる日もあった。
黒髪ショートで、香菜弥が今まで相手をしてきた中で比べると、どちらかと言えば細身に見える程度であろうか。
他の男は皆ゴツい体つきをしていた。
香菜弥は他のヤツとは何かが違うその男と戦うのが、心なしか楽しくなってきていた。
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