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「その方のコトは私も把握していますが……ふむ…」
弁当箱を見下ろし、しばらく考え込む夜影。
情報の中に1つ、思い当たるふしがあった。もしそれが間違いないなら、香菜弥にとっては珍しいコトで、つい可笑しくなって笑いそうになった。
「なんだよ?」
「質問です。最近、学校は楽しいですか?」
「んな訳ねーだろ。でも、その………なんとなく、行きたくなる。今まではそんなコトはなかった」
困惑した様に、苛立つ表情を見せる香菜弥。それを見て夜影はフッと笑った。
「なるほど……。男勝りとは言え、香菜弥嬢もやはり乙女ですね……」
「あぁ?いきなり何言ってやがる」
夜影は気づいた。香菜弥が恋心を抱きかけているコトに。
発端が何かは分からないが、あの男性が香菜弥の心に何かを残した、と言うコトだろう。
「いえ……何だか不思議ですね。今までそれとは無縁だった香菜弥嬢が。明日雪でも降るんじゃないですか?」
「だから何言ってやがる!んな訳ねーだろが!」
八重歯を剥き出し、夜影にクワッと噛みつく香菜弥。そしてそれを受け流す夜影。
「ははは。すいません。………しかし……そうですか…。もう…そうなってもおかしくない年頃なんですよね…」
夜影も空を見上げ、香菜弥に聞こえない様に静かに呟く。
応援したい反面、寂しさも感じていた。
今まで一緒に過ごしてきた頃を振り返ると、どれも楽しいものばかりであった。
それが離れていくコトを考えると、急に寂しさが込み上げてきたのだ。
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