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それから数週間経ち、香菜弥達にとって最後の修学旅行が始まった。
「……なんでテメェがいるんだよ」
「はは……よろしく…」
香菜弥のこめかみに血管が浮かび上がる。
同じグループに例の男がいたのだ。香菜弥は、班の決定を全て夜影に任せっきりにしていた。すぐに犯人は分かった。
「夜影」
「は、はいっ!?なんですか香菜弥嬢!?」
「お人好しが過ぎるぜ」
「なんのコトですか?」
表情からは読み取れない。
しかし香菜弥には分かった。夜影が仕組んだコトだと。
香菜弥の気持ちに気づいた夜影は、男とをくっつけようと仕組んだのだった。
「まぁいいや。アタイはいくぜ。じゃあな」
1人で歩いて行こうとした香菜弥の腕を、夜影は掴む。
「……なんだよ」
「香菜弥嬢はもっと社交性を身に付けるべきです。今は嫌でも、後から考えが変わるかもしれないじゃないですか。やってもいないのに嫌と言うのは子供の考えですよ」
「アタイは子供じゃねぇ」
「充分子供じゃないですか……。とにかく、グループ行動は絶対です。いいですね?」
手を振り払い、舌打ちをする香菜弥。
かくして、お先真っ暗な修学旅行が始まった。
「そういえば、香菜弥……さんはお嬢様なんだったよな」
「香菜弥でいい。それと、次お嬢様とか言ったらぶっ飛ばすからな。つーか話しかけんな」
施設を回りながら、男は香菜弥に話しかける。それを素っ気なく返す香菜弥。
一歩後ろで、その光景を見つめる夜影。彼なら香菜弥を変えてくれるかもしれない。そう思っての行動だった。
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