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こんなに胸が熱くなるものなのだろうか。この男といたら自分が分からなくなる。
それは嫌だ。嫌だけど、否定できない。
香菜弥は怖かった。壊れてしまうんじゃないだろうかと。それくらい胸が痛い。抑えきれない。
「なぁ――」
男が口を開いた瞬間、香菜弥は男に飛びかかり押し倒した。マウントをとって、香菜弥が見下ろす形になる。
「…アタイが好き…か。なら、今こうやってお前の顔面をグシャグシャにしても、アタイが好きって言えるかよ?言えないだろ?」
わざとらしくニヤついてみる。そして拳を握りしめる。
誰だってそんなコトをされれば嫌になるはず。コイツだって最終的にはそうなるはず。
そうなってこの話は終わり。自分もいつも通りに戻る。そう思っていた。
「言えるさ」
しかし男は言い切った。まるで怯みがない。むしろ香菜弥に対抗するように睨みつけてくる。
気に食わない。ここまで翻弄されるのも初めて。
「っ!!……そうかよ!!」
香菜弥は拳を振りおろす。拳を打ち込む瞬間でも、男の目に迷いは無かった。
当たる寸前で、香菜弥は拳を止めた。負けた。香菜弥はそう思い、拳を引く。
「…バカ野郎が…」
香菜弥は態勢を解き、隣に寝そべる。
「な、なんでやめた?」
男は上体を起こして香菜弥を見つめる。目を見開き、驚いた表情をしている。
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