孔寺蓮家頭首、香菜弥の過去(その4)

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「どうするんだ?そんな簡単な話じゃないだろ」 「さてね…。ただ、香須美の願いは叶えてやりたい。これは母親の願いだ」 虫の鳴き声が響く。 どちらも口を開かず、しばらく沈黙が続いた。 「………………」 「………………」 この時間、香須美は既に寝て、夜影はそれのお守りをしている。屋敷も静まり返っている。 香菜弥も夜影も拳児も、香須美の遊び相手にはなっていた。 しかし本人からすれば、やはり物足りなさを感じていたのだろうか。 「よぉ」 ふと、香菜弥が口を開く。拳児は顔だけを向けて答える。 「最近、体を重ねてなかったよな」 「……………」 「な、なんだよ」 香菜弥の突然の問いかけに、拳児は頬を染める。その反応に香菜弥も頬を染めた。 「い、いや……急にそんなコトを言うものだから……」 「………嫌か?」 拳児の手に、香菜弥の手が触れた。そして、自然と視線が重なる。 香須美が生まれてからは、久しくこんな風に2人きりになるコトもなかった。 「アタイは嫁失格かな?最近は香須美ばっかりで、全然拳児の相手をしていないな」 頬を染め、拳児を見つめる香菜弥。いつもの威圧感はなく、1人の女性としての姿がそこにはあった。 「そうだな……。少しは俺のコトもかまって欲しいかな」 「そうか。なら……たまには妻らしいコトしないとな…」 2人の唇が重なる。 月の明かりは更に輝きを増して2人を照らし出した。 ……………… ………… …… …
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