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「随分とお腹大きくなりましたね」
「ホント動きづれぇ……拳児替われよ」
「男の俺には無理だな。香菜弥だからこそできるコトなんだぞ」
香菜弥のお腹の中には新たな命が宿っていた。女の子で、順調に経過している。七夕での香須美の願いは叶ったのだ。
「お母さん!触ってもいい!?」
「あぁ。殴るなよ」
「そ、そんなコトしないよ…」
目を輝かせながら香菜弥のお腹を触る香須美。
小さな手が優しく撫でていく。
「香須美」
「なぁに?」
「もうすぐ姉ちゃんになるんだ。今度からは香須美がしっかりしなくちゃいけないんだぞ。できるか?」
新しい子が生まれれば、今までのワガママが通じない時だってある。
今までワガママを言ってきた香菜弥だからこそ、それが通じない悔しさが身に染みて分かるコトだった。
「うん!」
「そうか」
元気に頷く香須美に、微笑みかける香菜弥。
娘の言葉を信じた。この子なら心配ない。自分の子供なんだから。
「あ、今動いた!?」
香須美が目を丸くして見上げる。
「あと1ヶ月くらいか。最近全然動いてないな……。弱くなってるかも」
「香菜弥嬢に限ってそんなコトはありませんっ。香須美嬢が生まれた時だって全然衰えてなかったじゃないですか」
部屋に笑い声がこだまする。
こんな生活がずっと続くはずだった。続くと思っていた。
しかし事件は新しい命が生まれた後に起こる
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