孔寺蓮家頭首、香菜弥の過去(その4)

7/7
前へ
/258ページ
次へ
「随分とお腹大きくなりましたね」 「ホント動きづれぇ……拳児替われよ」 「男の俺には無理だな。香菜弥だからこそできるコトなんだぞ」 香菜弥のお腹の中には新たな命が宿っていた。女の子で、順調に経過している。七夕での香須美の願いは叶ったのだ。 「お母さん!触ってもいい!?」 「あぁ。殴るなよ」 「そ、そんなコトしないよ…」 目を輝かせながら香菜弥のお腹を触る香須美。 小さな手が優しく撫でていく。 「香須美」 「なぁに?」 「もうすぐ姉ちゃんになるんだ。今度からは香須美がしっかりしなくちゃいけないんだぞ。できるか?」 新しい子が生まれれば、今までのワガママが通じない時だってある。 今までワガママを言ってきた香菜弥だからこそ、それが通じない悔しさが身に染みて分かるコトだった。 「うん!」 「そうか」 元気に頷く香須美に、微笑みかける香菜弥。 娘の言葉を信じた。この子なら心配ない。自分の子供なんだから。 「あ、今動いた!?」 香須美が目を丸くして見上げる。 「あと1ヶ月くらいか。最近全然動いてないな……。弱くなってるかも」 「香菜弥嬢に限ってそんなコトはありませんっ。香須美嬢が生まれた時だって全然衰えてなかったじゃないですか」 部屋に笑い声がこだまする。 こんな生活がずっと続くはずだった。続くと思っていた。 しかし事件は新しい命が生まれた後に起こる
/258ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3531人が本棚に入れています
本棚に追加