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「……どういうコトだ…」
「わかりません……今懸命に連絡しているんですが……」
いつもと何ら変わりのないハズの平日になるつもりだった。
しかし今日に限って、香菜弥は珍しく焦っていた。外出したっきり、拳児との連絡が取れないというのだ。
拳児は、普段電話にはしっかりと出ている。
メイドの者が何処に行くか尋ねても、言葉を濁すばかりだったらしい。
新しく生まれた妹の由香莉と、姉の香須美を連れて数時間程の散歩をしていた間の出来事であった。その間に拳児は行方を眩ました。
香菜弥はギリッと歯を食いしばる。
嫌な予感がした。
「アタイが探してくる。香須美と由香莉を頼む」
「香菜弥嬢。情報がハッキリしないまま行動するのは得策ではないかと。あなたにまで何かあればどうするんですか?」
急く香菜弥を夜影は制止する。
夜影も嫌な予感がしていたからこその行動である。
今までもそうしてきた。飛び出しがちな香菜弥を夜影が抑制する。そうして今までもバランスは取られてきた。
「私達が勝手に焦っているだけかもしれません。とりあえず1日待ちましょう」
「お母さん……お父さんは…?」
雰囲気で察したのだろうか。香菜弥の道着をギュッと掴んで、不安そうに見上げるのは香須美。
もうすぐ4才になろうかという頃。意識が芽生え始めてきた頃であろうか。
「あぁ、香須美。お前が心配するコトじゃないさ。大丈夫……大丈夫」
香須美をギュッと抱き締めて、自分に言い聞かせる様に呟いた。
その日は眠れない夜だった。
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