3531人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい……拳児……。寝るなよ…拳児…。まだアタイに勝ってないだろう……?負けたままでいいのかよ…?アタイの旦那として恥ずかしくないのかよ!!おい!!拳児!!!!」
昔やった時の様に、胸ぐらを掴んで叫び散らす。そうすれば戻ってくると思った。
舌を出して、冗談だよって起き上がると思った。
しかしいくら揺すっても力の抜けたそれは動くコトはなかった。
「香菜弥嬢!!落ちついてください!!」
夜影が香菜弥を拳児から引き離す。香菜弥は抵抗した。抵抗したが力が上手く入らなかった。
「うっ…うっ…」
涙が止まらない。今までこんなに泣いたコトはあっただろうか。
「私だって悔しいですよ……こんなコトされて―――」
「夜影…」
夜影の言葉を遮る。
拳児は消えた。それは変えられない現実。
それは分かっている。分かっているが、どうしても抑えられない感情が沸き上がってくる。
体の底からどす黒い何かが。
「調べろ……誰がやったか……」
「しかし香菜弥嬢―――」
「調べろ……。殺してやる……。見つけ出して殺してやる……」
「っ――」
夜影の体がゾクリと震えた。今まで感じたコトの無い威圧感。香菜弥の顔からは已然、涙が滴り落ちている。
反論すれば自分が殺される。夜影はとっさに悟った。故に何も言えなかった。
今の香菜弥の光景を娘に見せてはいけない。夜影は、香菜弥1人を残しすぐに退室した
最初のコメントを投稿しよう!