孔寺蓮家頭首、香菜弥の過去(その1)

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―――――― 「一紀、大丈夫?ごめんなさい、うちの母さんが」 「いや…俺もバカだった。まぁ……それを覚悟して聞いたんだけど」 道場を出て、一紀と香須美は息をついた。あれほどの殺意を持った香菜弥を初めて見たからだ。 「今日のコトは忘れる。悪かったな」 「あの…お待ちください。稲葉様」 そう言い残し孔寺蓮家を去ろうとした一紀を、白いひげを蓄えた執事が引き止める。 一紀と香須美は眉をひそめる。 「どうしたの?」 「実はさっきの……香菜弥様の旦那様…香須美様、由香莉様のお父上のコトで」 「何か知ってるの?」 「はい……。香菜弥様の旦那様、拳児(けんじ)様は既に他界されております」 先程も言った通り、香須美はそのコトだけは知っていた。実際には記憶にほとんど無い。ぼんやりと覚えているだけだった。 「詳しく聞かせて。母さんに何があったのか」 「おい香須美」 「何よ。親のコトを知りたいのは子供として当然でしょ?それに、今の母さんにはそんなコト聞けそうにないし」 実際、今まで香菜弥から娘に対して、父親のコトを話そうとはしなかった。 それは忘れていたのではなく、香菜弥自身が話そうとしなかったからである。 香須美も性格的な面もあり、今まで父親のコトなど気にするコトはなかった。由香莉も同等。 それが今回の件で反動となり、香須美の探求心を突き動かしたのでいる。 意思をくみ取ったのか、執事はゆっくりと口を動かし始めた。香菜弥の過去について。 …………… ……… …
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