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「へっ!!これで終わりかよ!!」
「ぐっ!!て、てめぇ…!!」
「フンッ。令嬢だからって甘くみたな。アタイに勝とうなんて100年早ぇんだよ!!」
「ぐはっ!!」
とある街のとある夜、港の倉庫裏。月明かりの下で1人の少女が華麗に舞っていた。
ザックリと切られたブロンドのショートヘアーに怪しく光る紅い瞳。
スニーカーと赤のタンクトップ、ショートのジーンズパンツを身に纏い、両手にはテーピングを巻き、それを歯で咥え、ギュッと締め直す。
「ふぅ……これで15組目か……。今日は100人…と。どいつもこいつも大したコトねーな。そう思わねぇか?夜影(やえい)」
「あら……気づいてたんですか?香菜弥嬢。気配は完全に消したつもりだったんですけどね……」
香菜弥が上を向いて呼びかけると、倉庫の屋根からヒョコッと顔を出す姿があった。
長袖のYシャツ1枚に、締まりの入ったジーンズは動きやすさを重視したためだろう。
控えめな胸に、スラッと伸びる背丈は160程。
その体系と同じ長さの刀を腰に携えて、香菜弥を呆れたように見下ろす。彼女の名は夜影(やえい)。
月の光に輝く紺色のショートヘアーと、何故か閉じたままの瞼。
目が見えないわけではない。
というのも、香菜弥は何度かその目が開いたところを目撃したことがあるからだ。
本人に問い詰めたところ「目つきが悪いからです」の一点張り。
コンプレックスによるものでもあるだろうが、香菜弥が推測するに、ハンデの意味も含めているのではないかと感じている。
開眼の目撃回数の全ては、香菜弥との手合わせ限定によるものであるからだ。他と組み手をする際は、決して瞳が開くことはない。
日常生活の中で、瞳を閉じたままの状態で、どうやって物を認識しているのかは不明である。
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