月明かりに照らされて

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    「いや、既に平手打ちと急所に一撃くらってんですけどぉッ!?」 両手で必死に制止するも、凜は聞く耳もたずのようで、一向に銃口を下ろさない。 「まだ、気が晴れないので」 そう言って引き金を引こうとした瞬間、犬の吠える声が聞こえ、その方向から黒い大きな犬が走ってきた。 「雲英(きら)? どうしたの? 心配して来てくれたの?」 わんッ、と元気よく吠える黒犬の雲英にやっと銃口を下げた凜は近づき、身体を撫でた。 「雲英、助かったぜ…」 ホッと胸を撫で下ろす命。妖怪退治よりも、怒った凜の方が怖いらしい。 「劾さんが? 命さん、劾さんが呼んでるみたいですよ。早く戻りましょう」 「おぉ~」 命は首をまわして骨を鳴らす。氷鬼のを担ぐように持つと、屈伸運動をし一気に走る準備をする。 「んなら行くか。凜ちゃんはいつも通りに雲英の背中に、と」 雲英の背中に凜が乗るのを確認すると、少し伸びをして一気に走り出した。 馬よりも早く走るので、彼らが今現在泊まっている村までスグに着く。 なぜ、凜がわざわざ雲英の背中に乗るのかというと、まだ彼女は彼らほど速くは走れないからだ。    
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