月明かりに照らされて

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    女中に言われた通りに奧の部屋へ行くと、二人の人物がいた。 一人は女性。若くしてこの村の長に就いた妖艶な未亡人の美麗(みれい)。前村長は彼女の夫で、陰陽師。妖怪から村人を守る際に絶命した。 もう一人は凜と命のよく知る人物。刀身が6尺と5寸、柄が1尺と5寸の太刀"覇皇創(はおうそう)"を扱い、時折見せる銀の装飾が威厳を放つ黒基調の袴を纏い、肩より下まで伸びた黒髪、獣のような眼から放たれる眼光は他者を威圧し、震え上がらせる。 彼女たちの契約主、劾。 「村長、劾、戻ったぜ」 命がずかずかと室内に入る。美麗はフフッと笑っているが、劾は静かに眼を細めるだけだった。 「報告しろ」 見た目通りの聞く者の身体を押し潰すような威圧感あるその声が二人にかけられる。 「妖怪どもの親玉が"当たり"だったぜ。多分しばらくは襲撃やらは無いと思うがよ、"当たり"だったってことは、更に上がいるかそれとも…」 「足跡か…ね。どっちにしろ、もうしばらくは様子を見る必要があると思う」 凜と命がそこまで言うと、二人に向けていた視線を反らした。    
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