月明かりに照らされて

15/34
前へ
/245ページ
次へ
    「お二人が妖怪退治に向かってる時に、この村に一番近い村が妖怪に襲撃されましたの。劾が直ぐに駆けつけたけど、助かったのはごく一部。その人たちは今は宿で寝かせていますわ」 ふ~んと美麗の話しに頷く命はあることに気づく。 「…で、わざわざ雲英に俺らを呼びに行かせたのは、それを教えるためだけ?」 不満ともとれる命の意見に、あらあらという顔で美麗は劾を見る。 「襲撃した奴らの頭が、コレを持っていた」 そう言って劾が懐から取り出したものは、真っ黒の羽。カラスのよりも大きく、黒いと言っても、全てを呑み込まんとする深い闇が、そのままその羽に宿った感じだ。 「く…黒羽(くれは)。つーことは…」 「ヤツがいた跡だ」 命にそう答えた瞬間、手にしていた羽に火がつき、瞬く間に燃え尽きた。 「…今日はもう休め」 自分の太刀を持って立ち上がり、部屋を出ようとする劾を凜が制止する。 「どこ行くの?」 「お前には関係ない」 凜の質問にそう答えると、一人でどこかへ行ってしまった。  
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加