月明かりに照らされて

5/34
前へ
/245ページ
次へ
    「…っしゃぁ、大人しくなったぜ」 着地して凜に近寄り、いつもの調子で彼女の肩に腕をまわす。 「…重いんですけど?」 「あぁもうッ! 退けるよ、退けりゃぁいいんだろっ!?」 睨むと同時に、銃口を向ける。普段ならこんな脅しまがいのことはしないのだが…。 「…やっぱまだ怒ってる?」 「そうですね…。いたいけな少女の裸を盗み見ていたのですから。そんっな簡単に…」 皮肉たっぷりの言葉と、視線を命に投げつける。 「いや、アレはですね…。事故といいますか、不可抗力といいますか…」 視線が泳ぎ、顔がニヤけ紅くなっていく。 「と、とにかく、ワザとじゃ…ありませんからッ!!」 両手で凜が迫るのを制止する。 再び狼虎の銃口を命に向けていたからだ。 「それ以外に何か、言い残すことはありますか?」 可愛らしい笑顔を向ける。確かに可愛い…が、ただならぬ殺気を彼に対して放っている。 「り、凜ちゃん。早まっちゃダメだ。とりあえず落ち着こう。落ち着きましょう、銃口下ろして。ね? ね?」 ニタァとなる凜の表情。彼女が狼虎の引き金を引こうとしたその瞬間。再び大きく大地が揺れる。地面に埋まっていた一つ目が再び動きだしたのだ。  
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加