夢占

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朝日は 眩しすぎて 邪魔をする もう少し 現から 逃れていたいのに 逃れられないとでも 言いたいかのように 此処に 引きずり込まれる 「おはよう。昨日はお疲れ様」 ウザい。 「俺が運んでる途中で現姐さんが目を覚ましたら厄介だろう?」 だからなんだ。 俺には関係無い。 「あぁそうだ。楽楽がこの前のお礼がしたいって言ってたよ?この前ってなんの事かな」 知ってるくせに 最初から 最後まで 全部知ってるくせに 「寝寝は拗ねるかもね。楽楽が他の『屍族』と一緒にいるなんて、彼にとっては最悪な事だからね」 なら 断るが 「玄関でいるよ」 断りにくい 「まぁ俺が連れてきたんだけど」 死ね 「ちなみに、君が寝てる時から待ってくれてるから、相当な時間がたってるね」 死ね 「やだよ」 玄関には、本当にあの人がいた。雪が降っていて、凄く寒そうだった。そんな中、ずっと待っていたのか。あの人は。 「おぉ、おはようさん。その服やと少し寒いぜよ。もう一枚なんか着てきんしゃい。待っちょるき」 確かに肌寒いが、これ以上待たせるのは悪い。 「大丈夫ぜよ。寒いんには慣れとぅき。暑いんは勘弁じゃけどの。礼をして風邪引かすなんぞ、本末転倒じゃろう?ええから着てき」 こんなに 普通の人だっただろうか そう この人は最初から 普通の人だった 「じゃあ、すみません」 「ええきに。こっちはもっと迷惑かけとるんじゃき」 迷惑を感じた事は、無い。 「ホントに、楽楽は此処とは不釣り合いなくらい『普通』だねぇ。気持ち悪いくらいだよ」 お前の方が よっぽど気持ち悪い。 なんで俺の部屋で 俺の上着を持って 待ってたんだ。 「でもね、よく考えてみなよ。此処にいるのに、あれだけ『普通』なのは『普通じゃない』よ。そう思わないかい?」 今は 考えない。 「気をつけてね」 「お待たせしました」 「かまんぜよ。急に押し掛けたんはこっちじゃからの」 そう言いながらも、小刻みに震えている。唇も少し紫がかっている。罪悪感しか湧かない。 「礼と言っても、あんま考えとらんのじゃが…どっか行きたいとこあるか?」 行きたいとこと言われても 「とりあえず、暖かいところへ」 行かなければ、この人が凍死する。気がする。 「さよか……ちょっとすまんな」 俺の上着の内側に手を伸ばす。何かあるのか。 「すまんのぅ、夢助」 あいつが どうかしたのか 「よっ」 パキッ と、乾いた音がした。
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