夢現

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夢現

「imitation.」 あいつからのメール。 よく解らなかったあいつ。 あいつは最後に笑っていた。 無いと思っていた。 突然の終焉に。 確か、雨が…降っていた。 街を見下ろしたら傘が蠢く。 それを、無心に見つめていた。 いつもの光景。 なのに 苦しくて 怖くて 気持ち悪くて ただひたすら 涙を流した。 「死にたい?」 後ろからの声。 冷たい雨を凍らせるような 冷たい刃を突き刺すような でも 手を取ってしまいそうな 不可思議な声。 「死にたい?」 俺は 死ねない。 振り向かない。 振り向いたら きっと駄目だ。 「なんで?」 言葉を返せない。 答えてはいけない。 答えては 「屍族なの?」 あぁ、こいつは知っている。 知っていたのに 訊いてきた。 嫌な奴だ。 「…そっか…」 どうしよう。 殺そうか。 殺される前に。 大丈夫。 今日はもう 6人殺したから 「じゃあ 同族だね」 振り返ると そこには 血塗れのあいつが 笑っていた。 これが俺達の 始まらなければ良かった 戯曲の幕開けだった。 ここから戯曲は 終焉にしか 進まない。
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