◇硝子の心臓、硝子の心◇

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「貴方が言う様に、世界が言う様に、私は確かに強欲王子そのものでした。全てを欲しました。全てを手に入れました。手に入れてはならないものまで…。 私が最後に欲したもの。それは、…命です」 それは、オルトーの懺悔だった。後悔と苦渋に歪む男の顔に、もはやピエロの微笑みは消え失せていた。 「そんな馬鹿な。悪魔と言えど、命そのものを動かす事など出来ないはずだ」 オルトーは続けた。 「私には心臓がもう一つあるのです、つまり…」 「…【双心症】!?…何と言う事を…」 キティには覚えがあった。何故ならそれは、自身の病と対を成す、原因不明の心臓病だからだ。 「キティ王子、貴方のそれは…【硝心症】ですね?」 キティはいつの間にか、再び影を睨みつけている自分に気付いた。悪魔の知恵に翻弄される、鏡の様なもう一人の双子の自分に、あの頃を重ねていた。 男の子として生まれてしまった自分…。 凶器の様に曲がった父の腕…。 自分をかばう度に、自らを責める母…。 そして、母と見た美しく小さい花…。 そのどれもが、傷跡であり、思い出であり、生きてきた証だった。 ふと窓を見る。 ガラスに映る自分。その背後には太陽が、世界を焦がしながら沈んでいく。 まるで、命を削り取る様に…。  
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