◆二つの心臓、二つの心◆

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12月24日  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 私の家には、サンタさんはやってこないの。知ってるから、それがパパだってこと。夢がない子だと思う?キティ、それはきっとちがうわ。本当のことを知っていても、夢は見れるんだよ。単純に、そういうお話が好きってこと。空を飛びたいとか、おかしの家に住みたいとか。たとえ叶わないとわかっていても…。 夢って目には見えないからすきなんだ。 きれいな色の宝石よりも、 すきとおった湖のほうが。 真っ赤に燃える炎よりも、 冷たく澄んだ氷のほうが。 そこにはきっと、うそがないから。 白は白、黒は黒。どちらが良いとか、悪いとかじゃなくて、透明はなにもかくさずに、すべてを正しく見せてくれる。 ほらまるで、私のこの、ガラスの心臓みたいに……  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 日記はそこで終わっていた。 混濁している。希望と絶望が、まるで絵の具を零したバケツの様に。 「限界なんです。彼女はすでに…。いや、始めからと言っていい。私は思い違っていた。例えそれが偽りでも、友達の存在を僅かな希望だと…」 オルトーの胸には、再び後悔の念が頭をもたげていた。 「つまり、娘に心臓を…。その手術費用を、残された心臓と引き換えに…」 キティは全てを理解した。オルトーは娘の為に、両の心臓を捧げる覚悟をしている。 「どうして気付かなかったのか…。架空の友達ができたその時点で、彼女の心は、どうしようもなく…」 大切なものを知ったからこそ、それを失う苦しみは、どうしようもなく大きい。 「どうしようもなく、アンナの心は、…壊れていたのです」  
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