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12月24日
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私の家には、サンタさんはやってこないの。知ってるから、それがパパだってこと。夢がない子だと思う?キティ、それはきっとちがうわ。本当のことを知っていても、夢は見れるんだよ。単純に、そういうお話が好きってこと。空を飛びたいとか、おかしの家に住みたいとか。たとえ叶わないとわかっていても…。
夢って目には見えないからすきなんだ。
きれいな色の宝石よりも、
すきとおった湖のほうが。
真っ赤に燃える炎よりも、
冷たく澄んだ氷のほうが。
そこにはきっと、うそがないから。
白は白、黒は黒。どちらが良いとか、悪いとかじゃなくて、透明はなにもかくさずに、すべてを正しく見せてくれる。
ほらまるで、私のこの、ガラスの心臓みたいに……
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日記はそこで終わっていた。
混濁している。希望と絶望が、まるで絵の具を零したバケツの様に。
「限界なんです。彼女はすでに…。いや、始めからと言っていい。私は思い違っていた。例えそれが偽りでも、友達の存在を僅かな希望だと…」
オルトーの胸には、再び後悔の念が頭をもたげていた。
「つまり、娘に心臓を…。その手術費用を、残された心臓と引き換えに…」
キティは全てを理解した。オルトーは娘の為に、両の心臓を捧げる覚悟をしている。
「どうして気付かなかったのか…。架空の友達ができたその時点で、彼女の心は、どうしようもなく…」
大切なものを知ったからこそ、それを失う苦しみは、どうしようもなく大きい。
「どうしようもなく、アンナの心は、…壊れていたのです」
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