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「フザけるなッ!
俺には生きる価値があるんだ!他の誰よりも、他の誰よりもだ!」
キティ・ファンベルは苛立っていた。
いまこの瞬間だけは、きっと他の誰よりも。
この苛立ちが、ガラスの心臓に負担を与えるには違いない。しかしそれでも我慢ならない。王室即位を間近に控えたこの身体、正常な心臓と入れ換えねばそれも叶わぬ夢となるのだ。それどころかこの命さえも…。
簡単じゃないか。
順番待ちしている番号を、ちょっとだけ入れ替えて俺に回してくれればいい。その価値を俺が買い取ってやろうというのだ。いや、金のある者だけが、その価値を価値として認める資格があるのだ。それに、王としてのこの権力とは、そういう為のものじゃないか。
配れるだけの金は配った。
今までだってそうしてきた。政治家の首だって、右を左に曲げてきた。王の意志は絶対であるし、この国の政治はどうかしてるのさ。だがそれでいい。この国はクレイジーだと、すでに誰もが認め合い、慰め合い、諦め合っているじゃないか。その中で生き残るのは、俺のような資格のある者だけなんだ。はした金とは言わせない。それは俺の台詞だ。だが、お前等にはもったいない程の大金だろう。なのに何故、何故俺は生き残れない?王であるはずのこの俺が…。
「価値のない、資格のない人間が生き残る国家に、繁栄などありはしない!…。
出てこい!悪魔」
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