◇硝子の心臓、硝子の心◇

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沈みかけた太陽が、王の一室を容赦なく晒していた。刃の様に長く鋭く映しだされた自分の影を睨みつけるキティ。 その声は、まるで地の底のような闇の臭いがした。 『まじないを唱えるのが礼儀なんだが、まぁいい。それよりお前の願い通りなはずだ、違うか?』 姿形は無いものの、影が不自然にうごめく度に、鈍い声が発せられた。 『どん底にいたお前を救ったのは誰だ?…いや、これはあくまで契約だったな。オレとお前は、どこまでも対等でしかない』 【対等】という言葉に、厳しく反応するキティ。苛立ちが加速度を増す。 「いいか?センチメンタルで言ってるんじゃない。命を無くす事は圧倒的な『無』でしかないんだ。ゼロだ! [天国で幸せに]だと? [向こうで待っててくれ]だと? そんなもの在りはしない。絶望も希望も、その概念さえもだッ!」 『無神論者か。よくオレが見えたな。王の意志は、神の下にあるというのに。いや、だからこそ見えたのか。 キティ…。 キティ・ファンベル王子。 全てを無くしていたお前は、絶大な富と権力を手に入れた。その代償として無に還るのだ。それは、対等以外の何者でもない。 そう、契約には代償が必要だ…。絶望の代償がな…』  
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