◇硝子の心臓、硝子の心◇

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その男は、とてもみすぼらしい格好をしていた。 言うまでもなく、公邸の入口を通過しようとしただけで、警備兵に止められたと苦笑した。 「こんな成りですからね」 男はまた、自虐的に笑った。 「ところで私も、忙しい身分なんだが」 キティは気を急いて、男に詰め寄った。 「はい。僭越ながら、キティ・ファンベル次期国王陛下…。 私も、貴方と同じ契約者です。つまり、絶望の代償を払わされた者です。 ロット・ピピッチ・レルクル・ペンゼ…そのどれかは分かりませんが、悪魔と魂の取引をしました」 「……」 キティはコツコツと静かに足音を響かせながら、警戒の視線を投げ掛ける。 「ところが悪魔は、軽口を叩いた詫びだと言い残し、こうしてキティ・ファンベル次期国王陛下…貴方との出会いに至ったわけです」 「キティで良い」 「は?」 「キティで良いと言っている」 いつの間にか足音が止んでいた。 「光栄です…。キティ王子」 いつの間にか笑みは消えていた。 「調べさせてもらうぞ。オルトー・フランク、 …元・次期国王陛下」  
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