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男の名はオルトー・フランク。
みすぼらしくとも、間違いなく、キャンベル王家の正統なる王子であった。
「傲慢の限りを尽くし、城を追いやられた強欲王子か。そのお陰で俺は王室へと迎え入れられたわけだが、まさかこんな所でお目にかかれるとは。実に、運命と呼ぶに相応しい」
キティは、込み上げてくる笑いを抑えずにはいられなかった。
決して立ち入ってはならない場所に、あえて踏み込んで来る。つまり相手は、それほど危機的状況であり、そして自分にとっては、絶大なる好機であるというわけだ。
「先程は軽々しくも、運命という言葉を使った。何故だか解るか?その資格があるからだ。やはり俺は、選ばれた人間だ。もはや確信しかない。
聞いてやろう、元・王子。お前の言う取引とやらを」
キティの言動に何も語らないオルトー。そこには強欲王子の刺々しい気高さはなく、崇高で穏やかな気品さえ漂っていた。
その様子に、キティは憮然としていた。これではまるで、この男が真実の王子ではないかと。
「偽善の報酬など必要ない。だが、今だけは利用させて貰う。全ては命に優先するのだ。王としては特にな…」
オルトーは、ようやく口を開き、毅然として言った。
「金です。私の望むものは、ただのそれだけです。そして、貴方の望むものを差し出しましょう…。
この心臓を」
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