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夕方になり、おとんとおかんも外出から帰って来た。
ピンポーン。
私がリビングでテレビを見ながら寛いでいると、インターホンが鳴る。
「鳴海出てくれる?
お母さん今手離せないの。」
「はいよ~。」
料理中の母の代わりに、私は気の抜けた返事をして立ち上がった。
「はい。どちら様ですか?」
台所横のインターホンボタンを押して
外にいる人に話しかける。
……。
何も返事が返ってこない。
ピンポンダッシュ??
私が会話ボタンを切ろうとしたとき遠慮がちな声が聞こえた。
「俺だよ…。」
「あぁ。千鶴か!
待って、今出るから。」
私は玄関に走り、サンダルをつっかけてドアを開けた。
殊勝な顔をした千鶴が、夕闇に照らされて突っ立っている。
「どしたの?1日に2回も。」
私は千鶴の顔を見ながら聞いた。
「昼間は酷いこと言ってごめん」
そう言って千鶴が頭を下げる。
私は面食らった。あれ位の言い合いなど日常茶飯事なのに…。
「なーに?そんなこと気にしてたの?いつものことじゃん!私は全然凹んでないから大丈夫だよ。」
内心不審に思いながら笑いとばしてみせる。
すると、千鶴はホッとしたような顔をして、黒いUSBのような物をポケットから取り出した。
「お詫びにこれやるよ。自信作なんだ。」
「なに…これ??」
訳が分からないまま、それを受けとる。
一見普通のUSBだ。
「人口知能。」
千鶴が事もなげに言った。
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