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手から伝わってくる温かさ。
今すぐにでも抱きしめて彼女の全てを俺で染め尽くしてやりたかった。
その髪を、その頬を、その手を、その身体を、その心を。
でもそんなことをするのはやるべきことが終わってから。
彼女の手を割れ物でも扱うかのようにそっと引っ張って国民達が見える所まで連れていった。
一気に沸き上がる歓声。
彼女からわざと逸れたことを告げられた時は正直心が押し潰されるかとまで思った。
それだけ堪えてた。
逸れてから何度涙を流したことか。
そして再び逢ってわかった。
彼女をどれだけ愛しているかということを。
ふと横目で彼女を見た。
あの時からほとんど変わっていない。
呪われし血。
最初はその血がどんなに忌々しかったか。
でも今よくよく考えてみると、俺が歳をとって老いても彼女は少しづつしか変わらない。
永い間、1番好きなこの顔を見ていられる。
きっとあの人がいなきゃそうは思わなかったろう。
あの人が平等な世界を築いてくれたから今がある。
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