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一度触れ合った手はもう離すことは出来なくて。
彼はゆっくり私を引っ張って歓声の原因である国民達の前に連れて行ってくれた。
出会ってから、一緒に過ごして、別れて、また逢って、一緒に戦って、今までの全てを乗り越えて今、一緒にいる彼。
私の心は彼一人が独占していて。
一人で生きていた時の心の中の闇が溢れ出すように流れていく。
当たり前だった過去を彼が変えてくれた。
穏やかな光、大勢の民達の前にも関わらず私は高ぶる気持ちが抑えられそうにない。
気付いたのか彼はそっと腰に手を廻し私を抱き寄せてくれた。
暖かい。
あまりの暖かさに一筋の涙が頬を伝った。
「泣くな」
仕方なさそうに彼は手で私の涙を拭ってくれた。
その声も、とても暖かくて、暖かくて、私が1番好きな声。
思わず目に涙が滲んだ。
「…止まんないよ…」
笑顔で彼を見た。
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