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僕はキチンと一度久音に答えを返し、彼女はそれでも僕を追うと言ってくれた。だったら僕が久音の為にしてやれる事はこれくらいだった。久音が傷つかず、悲しまずのギリギリのラインを壊さない事である。でも、昔の僕なら諦めないんだよなあ……。
「……ま、何にせよ。私が必要とされているのなら……それは嬉しく思います」
僕の悩みをよそに、ボールペンの芯をカチリと音をたてて仕舞い久音も立ち上がる。どこか思い詰めたような表情もしていたが、久音は最近こういう表情を二人きりの時にだけ、よくする。だから僕は気にしてない。
僕も久音も。それぞれ別の事を考えながら、生徒会室を出た。
◆◇◆◇◆
「お、影人に天条じゃん」
「二人とも、今生徒会の帰りかい?」
二人並んで下駄箱に行ったら、そこで虎と長峰の二人に声をかけられた。
「うん。二人は勉強?」
「長峰に教わってな」
「虎は基礎をしっかりすればかなり楽になってくれたからね。教える側としても心よりは楽さ」
実はこの二人。最近よく一緒に居るのだ。
祭りの日をきっかけに、僕は久音と。虎は長峰と居る時間が増えたのだ。この二人の関係性は今はよくわからないが、この前虎からこっそり聞いたらなんとこの男。長峰にネタ抜きのマジボレしてしまったらしい。なんで猛烈アタックをしてるとか。長峰と同じ大学に入ると息巻いて異常な程に勉強をしている。
長峰もそのひたむきな姿勢を評価してか、心に勉強を教えてる身なのにたまに虎にも勉強を教えてるようで。勉強をする理由の根底にあるものが恋心とは、流石の長峰もわかるまい……。
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