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「影人、私そろそろ帰りますけど……送って行きます?」
「いやー、毎度毎度助かる」
「生徒会の仕事がある時だけですわよ? 足になるつもりはありません」
「それで充分さ」
いつの間にか靴を履いていた久音の後を追うようにして僕も靴を履く。後ろの二人にまた明日! と告げて下駄箱を出た所で──放課後会うのは、久しぶりな顔があった。
「──心」
「おっ、二人とも。やっほー!」
どうして、部活も生徒会もなくなった彼女がここにいるのか? という僕の疑問は、前に居る久音が聞いてくれた。
「あら、中星さん。ごきげんよう。長峰さんなら後ろの下駄箱ですが……もしかしてこれから勉強ですの?」
「おおっ、流石頭いい人は違うね! そうだよー、これから麗華んち行って勉強! 待ち合わせ場所がここなだけだよ!」
成る程。そういや、僕と心の家の方向と長峰んちの方向の中間にあるのが学校だった。予め長峰から聞いて、終わるタイミングを見計らっていたのだろう。しかしこんな時間にも元気な子だ、心は。
「あの成績で大学進学狙うのはマジだったんだね、心……」
「かげと酷い! 仕方ないけどさ……ま、そういう事よ!」
ただ話してるだけでも、分かる事がある。それは僕や久音、虎だけでなく。心も変わっていたという事。
「──なら、いっぱい勉強しないとね。それじゃ僕たち帰るから。しっかり長峰の言う事聞くんだぞ?」
一定の距離を保っているのを把握する。心も心なりに、けじめをつけた様子で。
あの日以来、放課後に会話する事はあんまり無かったから少し心配してたけれど、良かった。
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