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「……影人が、私を嫌いになるとか」
つらつらと語る。久音は、とても難しい問題に直面し、悩んでいた。それは解答なんてものは無いに等しく、僕がどうこう言えるものでもない。
「時が移ろう時、変化は必ず起こる。貴方も……わかるでしょう?」
それは痛いほどわかる。放課後、周りにあれだけ人が居たのに。あの頃のメンバーは、今では僕と久音二人きりの時が多いのが実情だ。
全員が揃うなんて事は、今は……ない。
「影人。差し支えなければ教えてください。貴方は目まぐるしく変わる世界に、どう対応していったんですか?」
迷いが見える久音。こいつはこれと決めたらひたすらに真っ直ぐなんだけど、決めるまでが長い。事実、この事で久音は悩んでいたみたいだし。
「僕は対応なんかしちゃいないさ」
久音の僕に対する買いかぶりに苦笑をしつつ、答える。それこそお笑い草だ。対応なんて高度な事が出来ていたのなら、僕の隣にいるのは……今頃……。
「影人?」
静かになった僕を見かねてか、心配そうに久音は僕に声をかける。頑固なこいつを納得させるには、やはり本音でぶつかるしかないのか……。
他に上手いやり方があるのかもしれない。ただ僕には、これ以外の方法は思いつかなかった。何せ、女の子が喜ぶやり方なんて分からないからこそ、僕は彼女に選ばれなかったのだから。
「僕は、心を諦め、久音に告られたあの祭りの日。携帯を握りしめて家で泣いた」
「──っ」
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