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一度久音の方を見る。
久音は泣きそうな顔をしていた。これが……将来の自分を想像した末の涙なのか、僕への同情の涙なのか。それは分からない。
「やめるか?」と一応気遣ったものの、久音は「続けてくださいまし」と強い声でハッキリと言った。なので遠慮はしないようにする。
「一週間くらいは、その日の生徒会の仕事を終えてすぐに帰り、ベッドに八つ当たりする日々が続いたよ」
「携帯に着信が来るたびに、ある筈のない彼女の名前を求めてしまう。そして違う名前が表示された瞬間、わかってた事なのに僕は落胆をしたもんさ。勝手な奴だよ僕は」
「放課後に毎回顔を合わせるんだ。長峰は最初こそ僕を気にしてくれたし、心も気まずそうにしてくれた。でも、僕が必死に隠したおかげでバレずに済んだようで」
「未練たらたらだった。本気でフられてもまだ僕は彼女しか見えていなかった。流石にストーカーじみていて自分に嫌気がさして」
「苦しくて、辛い毎日だったよ」
本当に勝手だった。
心配してくれる周りの人間を無碍にするような態度で一ヶ月くらい過ごしていたのだ。悔やんでも悔やみきれない。
「でも、僕がどんなに葛藤したって時は待ってくれちゃいない。どれだけ時を巻き戻して欲しいと願ってもそんな事は起こり得ない。神様なんて奴ぁ居ない」
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