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「お父様が浅松を私メインに付けさせたのもその頃からでしたわ。これまではお父様に重要な仕事が入れば、信頼の置ける浅松を随伴させていたのけれど……よほどの事が無ければ、浅松が常に私に付くようになりました。お父様に信頼されていないのかと考えましたが、あの時の私はそれでも構わないと信じ切っていました。……貴方が現れるまでは」
「……もしかして、仁さんが僕をいたく気に入ってたのって」
「私が話を進める前に察しないでくださいな……もうっ、こういう事には聡いんですから。そうですわ。浅松と言えど校舎に頻繁に入れる訳ではないですし、あとになって聞いた話だとお父様は酷く悩んでいたそうです。そこに私と対等に話し、且つ物事をしっかりと見据える人物がクラスメイトにいた、とお父様は述べてました」
それが僕って訳ね。
「……私としても、あの頃は貴方を負かしたいという負けず嫌いの性格だけで見ていました。ライバルなんて言葉ですら遠く、敵と言っていいくらいでしたわ。お父様は私の事をよく知ってくれていたから、私が……その……は、反省してたのも見抜いていたようで」
「だから僕と久音を……」
近付けた、もとい監視役をお願いしたって事か。そう言おうとしたが、僕は口を噤む。まだ僕のアルバイトの話は知らないだろうし、僕が言っていい事かもわからないからだ。しかし、僕は……。
「影人?」
「なんでもない。続けてくれ」
この事も、解決しないとなと思った。僕が久音の近くにいる理由として、お金を理由に見られたくなかったからだ。
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