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そう言うのと同時に、見慣れた巨大な正門が見えてくる。先に久音を降ろしてから僕を送ってくれるようだ。ありがたい限りである……としみじみ感じていたところで、一つの違和感。また別の、高そうな車が中に入っていったのだ。普段なら見かけない奴なので、僕は紫音さんでも乗ってるのかねくらいにしか思ってなかったが、二人はそうでないらしい。
「浅松、お父様は今日は帰って来るんですの?」
「そのような予定はないと記憶していますが……一応確認を」
なんと仁さんの車らしい。負けず劣らずの凄そうな車であったが、まさかの世界的人物の保有車だった。運転席で浅松さんが一言二言を交わし、僕らの方を向いて告げる。
「本物のようです。どうやら今日の仕事が早めに終了したそうで、お嬢様たちと食事を希望していらっしゃるそうですよ」
「……と言うことは、お姉様は帰宅済み?」
「はい、私は臼井様をお送りしてきますので、お嬢様は先に会食してきてはいかがでしょう?」
「そうさせていただきますわ」
気付けば家の前まで車をつけていた。久音が降り、僕にまた明日と声をかける。僕は特に引き止めもせずにじゃあねと言って会話を速攻打ち切り、浅松さんに出るようにお願いする。いつもならもう少し話していくので久音は不思議がっていたが、仁さんがいるという珍しい状況からか、そそくさと家の中へと向かっていった。
そこで、僕は一つのお願いを浅松さんにする事にした。
「浅松さん、悪いんですけど仁さんに今アポ取れますか?」
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